異世界人――――幻想郷という、異質な世界からしても更に異質な存在である。

幻想郷とは、即ち外界(世界的な換算でいえば、2000年現在の日本と言い換えてもいい)から、忘れ去られた存在が最終的に行き着くところである。

現代日本における廃れた神社や、例えば、最初の頃にできた電化製品などもこれにあたる。

早苗達のように、神への信仰心がいまだに息づいているから来た等と言った特殊な理由がない限りはここへ外界から行き着くことは、例外を除けばないといえる。

だが、セシルという存在はその例外の中でも更に例外的な存在だった。

稀有ではあるが、外の世界から人が紛れ込むことは極々偶にある。

それは、スキマ妖怪と呼ばれる妖怪である八雲紫が面白半分につれてきたり、結界の緩みによって不本意ながら侵入してしまうかではあるが、いずれも外界から来る存在である。

異世界とは、世界的にもリンクしていないのだから、ここにたどり着けるはずもなかった。

だが、セシルは辿り着いてしまった。

その理由を察知するには、東風谷早苗は幻想郷に慣れていなかった。

それ故に、早苗はこんな疑問を口にした。

 

「あの――――セシルさんは、どうしてこちらに?」

「――――僕も良くわからないんだ。 ただ、皆と別れて元居た世界へ帰るはずだったんだけど……次に気付いたときには、ここに居たんだ」

 

早苗の言葉に、セシルはどことなく困ったように言葉をこぼした。

実際、セシルにここに居る理由を察しろというのはかなり無茶な話である。 そもそも、セシルは元の世界へと還れるとばかり思っていた。 だからこそ、この場に居ることを相当戸惑っているのだ。

 

「ともあれ、これからどうするかな……」

 

セシルからすれば、前居た世界のようにコスモスの力になって戦うという指針すらないのだ。 幸いなことに、ある程度前の世界からアイテムを持ち越しているのである程度の生活には困らないだろうが……

そして、セシルは不思議と元の世界へ還ろうとは思わなかったのだ。 理由はわからないが、彼の中には元の世界へと還ろうという気分は沸かなかった。

――――そう、それはある意味仕方のないことなのだ。 なぜなら――――

 

「――――とりあえず、近くに人が居る場所があるかな? 生活できて仕事が出来る所があると助かるんだけど……」

 

ある程度、彼の持ち物はお金として還元できるだろう。 なぜなら、彼の持っているものは魔術的にも美術品としても価値があるものが多い。

中には、余りの力の強さに人には渡せないものもあるのだ――――例えばそれは、シューティングスターと呼ばれる杖である。

魔女アルティミシアが持っていた杖で、その力は時を操る魔女が持っていただけあって、凶悪の一言に尽きる。

アルティミシアの力は、紅魔館に居る十六夜咲夜の‘時を操る程度の能力’の上位版である。 なぜなら、彼女の力は時を遅くしたり、時を止めたりするだけでは留まらないからだ。

その力は、過去に行き来したり未来へと渡ることすら可能なのだ。 全ての時を支配しようとした‘魔女’の力はとてつもない。 そして、シューティングスターはその魔女の力がこもった杖である。

こんな物を、人にホイホイと売るわけには行かないのだ。

 

「えーと……でしたら、人里のほうへと行くのはどうでしょうか? この、妖怪の山を降りたところにあるんですけど」

「――――妖怪?」

 

セシルははじめて聞いた単語に、首をかしげる。

妖怪という単語は、セシルの語録の中にはない。 それは、セシル達の居る世界では、そういう存在を称して‘魔物’や‘モンスター’と呼んでいたからだ。

早苗も、セシルが自分達の文化圏にない存在だということを理解していたためか、すぐにセシルの疑問の理由に思い至る。

 

「妖怪というのは、妖――――人間の理解を超える奇怪で異常な現象を、象徴する超自然的存在や、あるいは不可思議な能力を発揮する日本――――この国の民間伝承において、非日常的な存在のこと。 妖または物の怪と呼ぶんです」

「ああ、なるほど、僕達の言うところの‘魔物’のことだね」

 

セシルは理解が言ったとばかりに頷いた。

つまり、この山は妖怪――――魔物が統括する山ということだとセシルは認識した。

早苗は頷くと言葉を続けた。

 

「はい、それでですね。 一応、ここを降りれば人里までいけるんですけど……途中で妖怪が現れると思うんです……セシルさんは戦える人、ですか?」

 

これほどの膨大な力を内側に秘めているのに、戦う人ではないとは思えなかっただろう。 早苗の言葉も、どちらかといえば、確認の意味が強かった。

セシルは、当然それに頷いて答える。

 

「うん、少なくとも、そこらへんに居る魔物に遅れはとらないと思うよ」

「そうですか……でしたら、人里へと降りるのが良いと思います。 そこにいけば、色々と情報とかも集められるでしょうし……」

 

セシルはその言葉を受けると、こくりと頷いた。

そして、立ち上がる。

セシルがここで聞くべきことは聞いた。 ならば、彼の気質として余りここに長居するのは良くないと考えた。

それゆえの行動だった。

 

「ありがとう、早苗さん。 色々と助かったよ」

「い、いえ……私もお役に立てて良かったです」

 

彼は礼を言い、立ち去ろうとした。

彼としては、この世界における生活の基盤を早く築かねばならないし、それ以上に、これ以上親切にしてくれた相手に迷惑をかけるのは心苦しいからだ。

だが――――

 

「ちょっと待って」

 

そのセシルを、早苗ではない声が呼び止めた――――

 

 

 

 

 

 


どうも、お久しぶりで、魔龍です。

さて、東方聖騎伝(とうほうしょうきでん)いかがだったでしょうか?

今回も短めですけど、理由があります。

幻想入り関係のお話は、動画ではあるのですが、実はアンケート式になっています。 詳しくは、ニコニコで見ていただくとして……

ですから、アンケートをとってみようかなと思います。

選択肢は……

A…セシルと早苗が一緒に行動する。
B…早苗とは別れたが、なぜか人形遣いがここに!?
C…セシルと早苗、そしてパパラッチ現る!?
D…セシル一人で行動、ちゃっちゃっと人里へ

お好きなのをお書きください。
これからこのお話は、こういうのが時々出てきます、出来ればお付き合いください。

ではでは、これからは出来る限り水曜日に更新できるようにがんばりたいと思いますのでよろしくお願いします。

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