「繋いでみせる――――みんなに貰った強さを」
帰って行く、還って行く。
選ばれし10人の戦士達は、自らの居るべき世界へと還って行く――――
全てを混沌へと返す存在、闇の神・カオスを打倒した戦士達は還って行く――――
そう、なぜなら彼等はその為に今まで戦ってきたのだから。
別れは寂しい。 けれども、彼らの思いと記憶は彼らの中に残る、だから、彼等は別れていてもそれでもその思いは通じ合っていると信じていた。
さあ、世界へと――――
「いいえ」
――――彼等が還って行く中、虚空より一人の少女が現れた。
全体的に紫色の服を身に纏ったその少女は、金色の髪をゆるゆると弄りながら笑みを深める。
「異世界の最強の力を秘めた戦士達――――ふふ、ただの外の世界の人間よりもよっぽど面白そうね」
彼女の目に留まったのは、一人の戦士だった。
何よりも、彼女はその男の内なる相反する光と闇がひどく気になっていた。
「光と闇の境界を越えられる力――――中々面白いじゃない」
彼女が目をつけたのは、銀の髪を持つ美しい青年だった。
端正な顔立ち持つ青年は、今まさに消えようとしていた。
――――彼らを纏め上げていた神・コスモスが残した力が消え元の世界へと還ろうとしているのだ。
「――――ふふっ」
少女は笑みを浮かべると、静かに手をかざした。
そして、青年が虚空へと消えた瞬間――――彼の纏っていた光が何かに吸収されていった――――
「いってらっしゃい、セシル=ハーヴィ。 そして――――」
いつの間にその手に取っていたのか、彼女は自らの持つ扇子で口元を隠し、上品な笑みを浮かべた。
誰をも惑わすであろう、その蟲惑的な笑みを浮かべた。
そして、その唇から優しく、そしてどこか楽しげに彼女は言葉を放った。
「ようこそ、夢と現の境界世界‘幻想郷’へ――――」
そして、一陣の風が吹き、その風が途切れる頃には少女――――八雲紫はその場から消えていた。