――――コインに裏と表があるように、この世界にも裏と表がある。

――――表の世界、つまりあなた達の住む世界、地球――――いえファー・ジ・アース。

――――そして、裏の世界。 つまり、私達魔王が住む世界――――裏界と呼ばれる世界。

――――世界は常に狙われている、そう、私達魔王と呼ばれるエミュレイターに。

――――言われるまでもなく、勿論、私も世界を狙っている。

――――でも、そう。 今回は少しばかり趣向を凝らしてみようかしら――――そうね、手を出すのはあそこの世界が
良いわね。

――――対した力も持たないくせに、自分達の手で世界を管理しようなんて粋がっている愚か者の集団――――そ
う、時空管理局。



ベール=ゼファーが軽やかに手を掲げると、世界は反転する。



――――それに、アレを人間如きに持たせるのは不愉快だし、ね。



ベール=ゼファーは笑う、愚かなる者達を、嗤う――――



――――愚かな人間どもよ、自らの力に驕った代償をその身に受けるが良いわ。



花のように可憐で、宝石のように美しく冷たいその瞳が―――― ―つの戦艦を映し出す。



――――始めましょう、この悪夢のようなゲームを――――



彼女がそう囁いたときには、大魔王である彼女――――ベール=ゼファーはその場から消えていた。










 
 
 
 
 
 
 
 
序章/魔王襲来〜悪夢の時〜









――――アースラ艦内

オペレーター席に座っていたエイミィは、雑誌に目を落としながらも時たま計器にも目を落としていた。

ここ最近は至って平和で、たまにそこそこな事件が入ってくるばかりであった。
 
――――かの、JS事件から、僅かな時も経ち管理局は大規模な上層部の挿げ替え等が行われていた。 その煽りを
くらい、彼女は一時的にこの艦へと戻ることになった。

現在この艦にはトリプル・ブレイカーズと呼ばれる少女達が乗っている。

一人目は、夜天の王‘八神はやて’

夜天の書と呼ばれるロストロギアの主である。

ヴォルケンリッターと呼ばれる、守護騎士を束ねることから彼女はそう呼ばれている。

二人目は、雷神‘フェイト=T=ハラオウン’である。

この艦の主である、クロノ=ハラオウンの義理の妹で、雷の魔法を主力に戦う、接近戦向きの魔導師だ。

速さにおいて、彼女に追いつくものはそうそう居ない。

そして――――



「エイミィさん」

「――――あっ、なのはちゃん、どうしたの?」



――――最後の一人が、彼女――――高町なのはである。

中・遠距離型の魔法のエキスパートであり、‘エース・オブ・エース’と呼ばれる少女である。

その才と、魔力の膨大さは折り紙つきであり、努力を怠らない少女である。

そう、先に紹介した二人とあわせて彼女達の呼び名は‘トリプル・ブレイカーズ’である。

各々が、管理局の規定するランクにおいてSランク以上を持つ強力な魔導師であり、本来なら一度に同じ艦に乗ること
はあり得ないといって良い。

各部隊には、部隊事に力が突出しないように保有ランクと呼ばれる物が存在するからである。

――――まぁ、だというのになぜ三人が同じ艦に乗っているかというと、理由としては簡単で偶然三人の任地が近く、
その帰りにアースラに乗っけてもらっているだけなのだが。

なのはは、エイミィの言葉を受け苦笑する。



「いえ、後、何分であっちに着くのかを聞きに来たんですけど」

「んー? 順調に行けば、1時間くらいかなぁ……」



計器に目を落としてそう言った瞬間だった。

エイミィが艦内の計器――――魔力の測定器が唐突にメーターを上昇させるのが見えた。



「っ! な、何!?」

「どうしたんですか、エイミィさん!?」



測定器のメーターは尚も上昇し続けていた。 その上昇率は、まるで留まる事を知らなかった。 いや、実際問題、測定
器は上昇し続けている。 このままでは、遠からず振り切るのは目に見えて明らかだった。

それがSランクを超えた当たりで、エイミィは艦内の自室に居るであろう、この艦の臨時の艦長――――リンディ=ハ
ラオウンに慌てて、呼びかけた。



「か、艦長! 大変ですっ!!!」

「――――エイミィ。 どうしたの?」

「ぼ、膨大な魔力が検出されました、その魔力ランクですけど――――う、嘘っ!? と……トリプルSオーバーです!!!」
 
「なんですって!?」
 
 
 
半ば予測はしていたものの、実際それを目の当たりにするとやはり違う。
 
悲鳴に近い声を聞いたリンディはただそう返すしかなかった。



トリプルSオーバー……それは即ち、管理局のものさしでは図れない存在ということである。

余りの膨大なその魔力は、周囲の魔力の感覚を崩してしまうほどであった。

身近で計器を見ながら聞いていたなのはも、凍り付いてしまっているくらいである。

――――当然ながら、それほどに膨大な魔力を出していれば、見つけることも直ぐにできた。



「か、艦長! どうしましょう!?」

「――――落ち着きなさい、エイミィ。 艦内に第一種警戒態勢を敷いて。 私も直ぐにそちらに向かうわ。 それと、フ
ェイトとはやてさんを」

「りょ、了解です!!」



エイミィは、その言葉を受けて即座に行動を起こした。

――――その様子を見ていたなのはは、顔が引きつりそうになるのを必死に堪えながらも言った。



「一時間では帰れそうにないね……」



それは、どことなく皮肉じみた声だった――――



















一方その頃――――

航行中のアースラの前に居るのは、銀の髪の可憐な少女――――ベール=ゼファー。

だが、彼女がその見た目通りの力しか持っていないかと聞かれれば、そんなことがあるはずもなかった。

侵魔(エミュレイター)の中でも大魔王であり、その力の膨大さは、彼女が裏界において第二位の力を持つことからも伺えた。

――――ベール=ゼファーは腕を組み、目の前にあり、こちらへと向かってくる巨大な戦艦を微笑みを浮かべながら見
ていた。

そして、迫り来る戦艦に向け片手で――――その戦艦を受け止める。



ズンッ!



戦艦にベール=ゼファーの細い腕が抉り込む。 だが、ベール=ゼファーはまるで揺るぎもせずに平然とその戦艦を
け止めていた。



「あら、思ったよりも軽いし脆いわね?」



ベール=ゼファーはそう言うと、そのまま片手で戦艦――――アースラを受け止めたまま蹴り上げた。



ガァァァァァン!!



鋭い音と共に、アースラが蹴り上げられ装甲が平然とひしゃげ、砕けた。

――――そして、内部の一部分がその蹴りにより破壊されたのか、砕けた部分からスパークが起こっていた。



「もう、邪魔だし本当に脆いわね――――集え、歪みし闇



ベール=ゼファーはうっとおしそうにそう言うと、その手に膨大な魔力を込めていく。

――――闇色のそれは、虚無の魔法。

収束していく闇は小さな玉の形へと変化する――――!



「‘ヴォーティカルショット’」



――――彼女の手の上から放たれた拳大の空間の歪みのつぶては、あっさりとアースラを貫きその船体を大きく揺さ
ぶられた。



「あら――――やりすぎたかしら?」



ベール=ゼファーの向いた方から、白い者が向かってきた。

栗色の髪の毛を空に舞わせた、白きバリアジャケットに身を包んだ少女――――



「ようやっと、おでましって所ね?」

「――――ッ!」



















「ようやっと、おでましってところね?」

「――――ッ!?」



告げられたその言葉だけで、なのはは心臓を鷲掴みにされるような恐怖を覚えた。

そう、一言だけで分かった。 相手は格どころか次元が違う相手だと。

少女の周りの膨大な魔力は、それだけで空間を歪ませるほどだった。 エース・オブ・エースと呼ばれたなのはですら、
今すぐにここから逃げ出したくなるほどである。

だが、そういうわけにはいかない――――彼女の傍には守るべき人たちと守るべき者があるのだから。

故に、心にある恐怖を無理矢理封じ込めて彼女は凛とした言葉を紡ぐ。



「時空管理局・スターズ隊隊長・高町なのはです。 あなたの行った行為は、魔法犯罪に当たります、速やかに投降し
てください」



彼女の持つインテリジェンス・デバイス――――レイジングハートを構えながら言う。

だが――――こう言った彼女自身が自覚している。 目の前の相手は、投降するような相手ではない、と。

そして、なのはの言葉を受けたベール=ゼファーは、なのはの予測どおりの言葉を返す。



「ふふふふっ……心にもないことを言うんじゃないわよ、管理局員さん?」

「っ……! 停止しない場合、制圧することになりま――――」

「そういうのなら、早くかかってらっしゃい? 私も、暇じゃないのよ」



微笑みを消さずに、ベール=ゼファーは悠然と構えたまま言う。

――――なのははその言葉を受けると、即座に魔力を弾丸へと変化させる。

それは、なのはの得意魔法の一つである魔法。



「レイジングハート! 行くよっ!!」

『はい』



レイジングハートはその言葉に答え、36個の魔力球を作り上げた。

――――限界数まで作り上げたのは、最初から全力でいかなければ間違えなく瞬殺されるからだ。



(時間を稼げば――――フェイトちゃんと、はやてちゃんが来ればっ!!)
 
 
 
――――彼女の戦いは、今、始まった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アースラ艦内。

――――その中で、長い間共に戦ってきた戦友の最終航海になるであろう、今回の次元航海は平和なものに終わる
はずだった。

一応、時空管理局の艦である以上、任務の為に動かさなければいけないので名目上は任務であるが。

それが、慰労をかねたものである事は誰もが理解していた。

美しき緑の髪の女性――――リンディ=ハラオウンは、ともすれば焦りそうになる思考を必死に押しとどめ、その聡明
な頭脳を回転させていた。

しかも、現在この艦には初期の頃にはエース・オブ・エースである高町なのは。 後からの合流ではあるが、雷を操るS
ランク魔導師‘フェイト=テスタロッサ’。 そして、AA以上の魔導師を複数従え、自身もまたSSランクという超級の実
力を持つ夜天の王‘八神はやて’と、そして、この艦の一時的な艦長を任命させられた、位置が違うもののSSランク高
位魔導師である彼女、‘リンディ=ハラオウン’という、壮絶なメンバーによって、構成されていた。

よっぽどの馬鹿か――――もしくは、最悪な実力を持つ相手ぐらいでなければ、この艦に近寄ろうとは思わないはずだ。

だが、現在、艦長席に座っているリンディ=ハラオウンは頬から伝う汗を隠せないほどに、凄まじいプレッシャーを与え
てくる相手に肝が冷える思いだった。

リンディが艦の壁越しにすら感じている魔力でも、桁違いの魔力が感じられるのだ。

――――先に出たなのはが、どれほど絶望的な実力差を感じているかは想像に難くない。



(急いで援軍を送らなくては――――!)



いくらエースオブエースと呼ばれている少女でも、これは相手が悪い。

むしろ、管理局総出でかかっても勝てるかどうか妖しい。

――――この相手は、そういう相手だ。



「リンディ提督!!」

「母さん!!」



そう考えていたときだった。 通路のドアから二人の女性が現れた。

金色の髪に抜群のスタイルの女性――――リンディの義理の娘である、フェイト=T=ハラオウンと。

茶髪の髪に、クリッとした瞳――――夜天の魔導書に選ばれし最後の王、八神はやてだ。

二人は、慌てた表情でリンディの方へと向かうと、リンディに向けて言葉を発した。



「な、なんなんですか、この馬鹿でっかい魔力は!?」

「いくらなんでも異常だよ!? こんな魔力今まで感じたことが――――!」

「二人とも、落ち着きなさい」



慌てている二人に、リンディはピシャリと冷や水をかぶせるように言う。

――――ここら辺さすがは年長者であり、踏んできた場数の違いだろう。 リンディは、動揺を一切表に出さずに、二
人に話しかける。

リンディの冷静な声を聞いてだろう、彼女達も流石に少し冷静になる。

バツが悪そうな表情を見せる二人に、リンディは少しだけ苦笑を漏らすが、それを続けるのは現状が許さなかった。



「――――残念だけど、今はのんびりしている暇じゃないわ。 はやてちゃん、フェイト、即座になのはちゃんの応援に
いって」

「――――! なのはがもう出てるの!?」

「ええ――――状況は――――」



ズドォン……と、艦が僅かに震えた、それは何かが何かにぶつかる音だった。



「――――最悪よ」



その声と共に、映し出されたのは――――アースラの艦板に叩きつけられた、高町なのはの姿だった。




















「アクセル・シューター!!」



放たれた36の弾丸は、迷うことなくベール=ゼファーへと向かう。

そのどれもが複雑な軌道を描き、その軌道を普通の存在どころか、AA以上の魔導師すら全てを見切り弾くのは厳し
かった。

だが――――対峙するのは、裏界において最強レベルの魔王――――ベール=ゼファー、その本体。

彼女は少しだけ表情を楽しげにすると、なのはと同様に――――その色は漆黒だが――――球体を作り上げた。

虚無属性の魔法‘ヴォーティカル・ショット‘だ。

ベール=ゼファーはそれを不適に笑いながら構える。



「シューティングは割りと得意なのよ?」



向かってきた弾丸に、それを容赦なくぶつけていった。



「っ!!!!!」



アクセル・シューターの弾丸は、ベール=ゼファーの放った弾丸によって寸分違わず全て破壊された。

しかも――――



「まだこちらの攻撃は終わってないわよ?」

「ッ!! レイジングハート!!!」

『ディバイン・バスター』



ヴォーティカル・ショットの弾丸は、そのままなのはへと方向を転換させてなのはに襲い掛かる!

なのはのアクセル・シューターを破壊するその威力がどれほどのものかは、当たれば分かるであろうがその時に彼女
自身がそれを理解できるかは妖しいだろう。

――――何せ、即死であろうから。

更に言えば、なのはがこの弾丸をかわしきれるかは妖しい、いや、ほぼ回避不可能だろう、それ故に高町なのはは覚
悟する。



(手前で――――打ち落とす!)



ヴォーティカル・ショットの弾丸に対してなのはは砲撃魔法である、ディバイン・バスターを後ろに後退しながら構え
―――― 一斉に襲ってきた弾丸に向けて放つ!



「ディバイン・バスター!!!」



キュゴッ! ごがあぁぁぁぁぁあぁぁん!!!!



ディバイン・バスターの砲撃によって、ヴォーティカル・ショットの弾丸は次々に誘爆し、その闇あたりに撒き散らした。

――――だが。

その爆発の規模は、なのはが予測していたよりも広かった。

誘爆したヴォーティカル・ショットはなのはを巻き込んだのだ。

爆発の影響で受けた傷により、なのはのバリアジャケットの部分部分が弾け、彼女の柔肌に傷を付け赤い血が滲ん
だ。



「あ、く……!」



痛みに顔を顰めながらも、なのははレイジングハートを構えた。

なのはが構えたその様子を見たベール=ゼファーは、ただ酷く愉快そうに顔をゆがめた。



「ふふふ……今のを耐えるなんてやるじゃない?――――あの一撃を耐えられそうなのは、私の直接の面識がある人
間では、10人くらいね」



くすくすくすくすと笑うベール=ゼファーを見て、なのはは顔をゆがめる。

――――遊ばれている。 それを露骨に感じ取ったからだ。

だが、遊んでいるのなら遊んでくれた方が良い、せいぜいなのははその隙を突くだけである。

なのはは、改めてアクセル・シューターのスフィアを出現させた。

先程と同様に、今度もまた36個である。

――――今回は、ベール=ゼファーは顔を顰めた。



「またそれ? 同じ魔法は通じないわよ?」



だが、その言葉になのはは不適に笑うと、スフィアを一気に展開させて――――放つ!



「――――同じじゃ、ないよッ!」



放たれた36のスフィアは先程と同様に、一斉にベール=ゼファーに向かって放たれる。

それをつまらなそうに見ながら、ベール=ゼファーは髪を弄り、先程と同様にヴォーティカル・ショットを出現させた。



「――――なら、同じじゃないところを見せてみなさい?」



興味深そうにそう言いながら、弾丸が先程と同じように放たれて、アクセルシューターを迎撃――――いや、撃墜しよう
とする。

だが、スフィアと漆黒の球体がぶつかった瞬間――――



カッ!!! ドドドドドドドドドドドドドォンッ!!!!!



アクセルシューターのスフィアが爆発し、ヴォーティカル・ショットを巻き込んだ。



「誘爆!?」



――――そう、先程のヴォーティカル・ショットをなのはは見て、この球体は誘爆に巻き込まれればその場で球体自身
は破壊できるのだ。

それ故に、その場で破壊できれば、その後の脅威はない。

更に、その二者の爆発により、一瞬だけ視界が完全にふさがれてしまったのだ。



「なるほど! 確かにさっきとは違うわね!!」



ベール=ゼファーは楽しげに笑うと、魔力をその手に集める。

ヴォーティカル・ショットではなくその上位魔法――――ヴォーティカル・カノンをその手に集めたのだ。

このふさがれた視界が回復された瞬間に、撃ち込むために――――

そして、視界が――――晴れる。



「――――ッ!?」



その場に高町なのはは居なかった。

一瞬の視界の封鎖の間に、彼女は――――



「油断、だね」

「――――!?」



そう、その一瞬の間に、高町なのははベール=ゼファーの後ろへとまわっていた。

その手の先にあるレイジングハートの前には桃色の巨大な球体――――それは、彼女の必殺魔法であるスター・ライ
ト・ブレイカーだった。

なのはは、視界をふさぐと同時にフラッシュムーブでベール=ゼファーの後ろへと移動し、溜め込んでいた魔力を全て
集積させて、スター・ライト・ブレイカーの構えに入っていたのだ。

流石に慌てて回避の行動を取ろうとする、ベール=ゼファー。

だが、その体には、光の帯のようなものが纏わりついていた。



「これは……?」

「バインド。 あなた相手なら、数十秒と持たないけど――――それで、十分。 悪いけど、手加減はしないよ……スタ
ー・ライト――――



集積された魔力が、星のように集まり、その高町なのはを高町なのはたらしめた魔法――――スター・ライト・ブレイカ
ーを放つ――――!



「ブレイカー!!!!!」

「――――ッ」



ベール=ゼファーの姿はスター・ライト・ブレイカーの桃色魔力光の中に消え去った。



















確かな手応えをなのは感じていた。

――――そう、確かに高町なのはのスター・ライト・ブレイカーは命中していた。

高町なのはの一撃は絶対であり、それは勝利を確信させるに足るものであるはずだった。

だが――――

ガシリとスター・ライト・ブレイカーの桃色の光の中から手が伸びてきた。

それは高町なのはの持つレイジングハートを平然と掴んだ。

なのはの瞳が大きく見開かれ、そして驚愕に歪む。



「――――なるほど、中々に良い魔法だわ。 でも、ね――――」



微笑みすら浮かべるベール=ゼファーに、なのはは心の奥底から恐怖を感じた。

今まで、この魔法をありとあらゆる手で防ぐものはいた。

同等かそれ以上の魔力で相殺するものや、高速移動で回避するものも居た。

だが、目の前の存在のように、間違えなく命中しているのに平然としている存在を彼女は知らない。

彼女のスター・ライト・ブレイカーは、例え、結界や防御魔法を張ったとしてもそれを貫通するのだ。 だが、それすらし
ていないというのに、彼女の目の前の存在は今だにスター・ライト・ブレイカーの渦中に居ながらも平然としていた。

少女の姿をした、最悪の魔王は妖艶に微笑む。



「――――私には、通じない」



ベール=ゼファーのなのは以上にほっそりとしたその腕が、ゆっくりと動く。

優しげに微笑すらベール=ゼファーは浮かべていた。



「ほら、おかえしよ、ちゃんと受け取りなさい? ――――ヴォーティカル・ショット



その一撃は、かわす暇もなくやってきた。

なのはの胸元へと移動してゆく……!



(か、かわさないと……!)



先程から、その威力は見ている。

スター・ライト・ブレイカーを中断してでも動かないと――――彼女は大ダメージを負う事になるだろう。

だが――――



「無駄よ? あなたの大切な杖は私が握っているもの?」

「ッ!!!!??」



そう、ベール=ゼファーの片腕はなのはの杖――――レイジングハートを掴んでいたのだ。

そして――――なのはの胸元で、ベール=ゼファーの放ったヴォーティカル・ショットが爆発した――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
闇が爆ぜ、なのはの胸元が爆ぜる。

真っ白ななのはのバリアジャケットは大きく破れ、なのはの胸元を晒した。

意識は完全になくなり、一瞬、体から力が全て抜け落ちた。 全身からは力が抜け、体は真っ逆さまに落ちてゆく。

そして、アースラの艦板にぶつかった衝撃と共になのはの意識は強制的に叩き起こされた。

なのはの体は、アースラの艦板に完全に嵌っており簡単には抜け出しそうになかった。



「あ……ぐ……っ……」



口から声を出そうにも、その声すら彼女は出すことができなかった。

せいぜい漏れ出たのは、言葉にすらならないうめき声だった。

その様子を見た、ベール=ゼファーは微笑を浮かべた。



「よくがんばったわね、この、大魔王たるベール=ゼファーを相手にたった一人で」



だが、次の瞬間ベール=ゼファーの口元には嘲笑が浮かんでいた。

――――ベール=ゼファーは言葉を続ける。



「あなたは私にこう言ったわね、油断したね、と」



クスクスクスクスとベール=ゼファーは嗤う。

可笑しげに、妖しげに、愉快そうに――――彼女は嗤う。



「それは違うわよ。 だって、油断なんかする必要がないもの」



ツカツカとベール=ゼファーはなのはの元に、歩み寄る。

それに、なのはは本能的に恐怖と絶望を感じた。

カランカランと杖――――レイジングハートがなのはの前に転がる。



「私には分かっていたんですもの――――あなたの攻撃が私には効かないって、ね」



それは、道理だった。

――――月衣。

ベール=ゼファーの居る世界、即ち、第八世界‘ファージアース’。

その世界には、世界の常識によって作られた結界――――世界結界がある。

世界結界とはつまり、全ての非常識を遮断する結界である。

その世界において、非常識は全て常識に淘汰される。

では、ベール=ゼファーのような元から非常識な存在はどうなるのか? それは簡単だ。

世界結界による否定は、魔法をすら否定してしまうのだ、その力は絶大だ。

だが――――その結界を抜ける方法は二つほど存在する。

一つは月匣。 世界を隔離する結界を張り、常識を遮断すること。

そしてもう一つが――――月衣だ。

月衣とは、世界結界とは真逆で、つまりは常識を遮断するのだ。

これによって行われる常識的な行いは、全て月衣によって遮断されるのだ。

小さなことなら、熱さや寒さ等を遮断するが、大きいことになれば衛星の直撃にすら耐えられるのだ。

――――そして、目の前に居るのは大魔王、しかも写し身ではなく本体である。

その月衣の力は計り知れず、スター・ライト・ブレイカーという力をすら遮断してしまうほどの月衣を持っていた。

無論、なのはの使った魔法はファージアースにおいては非常識であるが、残念ながらここはファージアースではない。 
ここは、魔法が常識として認識される世界の付近だ。

即ち、ここにおいて高町なのは達の使うミッド式や、古代ベルカ式の魔法は‘常識’に分類される。

故に、月衣の力が働き遮断されてしまったのだ。

つまりは、なのは達の魔法は彼女には一切通じないのだ。

ベール=ゼファーは溜め息を吐いた。



「正直、ワンサイドゲームは好きじゃないのだけれどもね。 これは、私が考えているゲームを始めるための――――
準備だから。 だから、諦めて頂戴。 せめて、これ以上苦しまないようにしてあげるわ」



にこりと、天使のような微笑みを浮かべる。

だが、その言葉には――――残酷なまでに、死の予感が滲んでいた。



「それじゃあ――――さような――――」



ベール=ゼファーの強大な魔力が更に膨れ上がる。

それは、なのはを殺すであろう魔法だ。

瞳を閉じ、なのはは死を覚悟する。

――――だが。



「――――させないッ!」

「――――ら!?」



金色の光が世界を侵食した。

なのは以上の速度を持って、放たれたその一撃はベール=ゼファーを吹き飛ばしその距離を空けた。

目の前に立つのは、雷を纏いしなのはの親友――――フェイト=T=ハラオウン。

彼女は自らの相棒である‘バルディッシュ’を構え、なのはの盾になるように庇う。



「大丈夫か、なのはちゃん!?」



そして、遅れて現れたのは彼女のもう一人の親友である少女、八神はやてだ。

なのはは二人の登場に、一瞬唖然とした。

だが、すぐにそれに答えようと声を必死に絞り出す。



「ふぇ、いと…ちゃん。 はやて……ちゃん、私は、だいじょう……ぶ……」

「アホなこというんやない! どこが平気何や!!」



埋まっていた体を、はやてに起こされながらなのはは二人を見た。

二人の親友は既にバリアジャケットに身を包んでいた。

シュベルトクロイツとバルディッシュを持った二人は、まさしく夜天の王と雷神であった。



「それにしても、なのはちゃんがこんなになってしまうなんて……」

「相手は――――そんなに強いんだ……」



二人は、その相手――――ベール=ゼファーを見た。

彼女は、バルディッシュの攻撃をまともに受けたはずだというのに、傷一つ負っていなかった。

――――それは当然であろう、なのはのスター・ライト・ブレイカーをまともに受けて傷一つ付かなかった相手である。 
小手先の攻撃が通用するとは思えなかった。

幸いというべきだろうか――――距離を取れたのは。

いや、それは違った――――



(――――むしろ、最悪かもしれない)



――――先程からの戦いを見て、ベール=ゼファーはどちかといえばなのはよりの魔法戦を得意とするようだ。 つま
り、距離をとるのは愚作である。



(二人に、つたえなく…っちゃっ……!)



体を起こして伝えようとするが、その体がうまく動かない。

その様子を見て、はやてが焦ったように言う。



「なのはちゃん、動いたらあかん!」

「……っ」



だが、怪我をしているなのはが動くのを許すわけもなく、はやてによって押しとどめられた。



「大丈夫や、私とフェイトちゃんが居れば、なんとかなる」

「そうだよ、だからなのは――――そこで休んでて」



にらみつけるような視線を見せるフェイトと、静かな怒りを湛えた瞳をベール=ゼファーにぶつける二人。

ベール=ゼファーはその視線を受けてか、髪を弄っていた手を髪からはずし腕を組む。



「お話は終わったかしら? それじゃあ、そろそろ続きを始めましょう」



その言葉と共に、凄まじい魔力が辺りの空間を湾曲させる。

――――それは、ベール=ゼファーの放つ絶対者の力。

二人も、まじかで感じるその力に、冷や汗をかいた。



「な、なんやと!?」

「くっ……!」

「どうしたの? 早く来たらどう?」



微笑すら浮かべるベール=ゼファーに二人の少女は、一瞬硬直してしまう――――が。

それでもやはり二人は、かなりの場数を踏んできた実力者だった。

硬直から即座に抜け、フェイトはバルディッシュのモードを即座に変化させる!



「いくよっ、バルディッシュ!!」

『ライオットフォーム』



フェイトのバリアジャケットがはじけ、彼女の身をレオタードのような服のみが包んだ。

‘ライオットフォーム’

彼女の持つフォームの中でも、最強最速を誇るリミットブレイクフォームである。

本来一本のはずのバルディッシュを二刀に分けるライオットザンバー・スティンガーとその二本をあわせたカラミティの
二つの姿を持つ。

フェイト=T=ハラオウンの切り札に値するフォームである。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」



スティンガー形態になったバルディッシュを振るい、二刀の連撃をもってフェイトは、ベール=ゼファーの動きを封じんと
連撃を次々に仕掛ける!!



「ちっ、ちょこまかと!」



動き自体には彼女の知る、魔剣使いほどの錬度はなくともともかく早い。

正直に言えば、うっとおしいというのが正しいか。

だが、その中でも、ベール=ゼファーは魔法を唱える。



「我が意に従い空間よ歪め――――ディストーションブレ」

「させんよ!! ブラッディダガー!!!」

「ッ! チィッ!!」



放たれたブラッディダガーは、ベール=ゼファーの寸前に出現したが彼女は即座に移動することによって回避した。

フェイトは一瞬できた空白の間に、事前に唱えてあったソニックムーブによって離脱している。

爆散するブラッディダガーを背にベール=ゼファーは不適に微笑む。



「以外とやるじゃないの。 でも――――とどかないわね、それじゃ」



――――事実、フェイトの攻撃を受けて不意を突いたはずなのに命中はしなかった。

だが――――この場で、二人だけ気付いている人間が居た。 これは、茶番だと。

一人は当然、ベール=ゼファーと、そして、もう一人は――――



(駄目――――いけない、逃げてっ)



誰であろう、高町なのはだった。

更に増すプレッシャーを感じ、フェイトとはやては冷や汗をかく。



「あかんわ、こら……洒落になっとらんわ……!」

「――――っ!」

「それじゃあ、今度はこっちから行くわよ?」



そう言って、彼女が手を中空にかざすと光が集まり始める。

先程の闇ではなく、その手には清浄な光が集まっていた。

――――二人は、今までにない魔力の高まりに最大級に鳴る警鐘に導かれるまま、即座にその場を離れた。



「それに、そろそろ飽きたのよ――――だから、手っ取り早くやらせて貰うわ。 ジャッジメントレイ



それは、大いなる聖なる光を集め、その聖なる光を雨のように放つ魔法だ。

完全な力を持つ、ベール=ゼファーのそれは当たればどうなるか想像すらしたくない。

更に言えば、ヴォーティカルショットのような、レベルの低い魔法ではない。

この魔法、使うものの――――いや、正確に言えば使えるものの少ない高位魔法だ。

故に――――



「くっ…はぁっ……!」

「――――あああああああああっ!!!」



この二人といえども、そうそう簡単にかわせるものではないのだ。

フェイトはソニックムーブで範囲外に逃れようとしたが、僅かに遅れ聖なる光によって大きく吹き飛ばされた。

そして、はやての方は受け止めようとするが、この魔法はとてもではないが受けられる魔法ではない。 ジャッジメント
レイの攻撃を数秒間防ぎはしたが、シールドは完全に弾け飛び、すんでの所で直撃は免れたものの、衝撃でフェイトと
同様同じ場所に吹き飛ばされた。

――――奇しくもそこは、なのはの居る艦板である。

いや、むしろこのような偶然は起きないだろう、そう――――ベール=ゼファーはこの三人を意図的に集めたのだ。



「あ、く……大丈夫か、フェイトちゃん」

「――――う、うん。 なんとか」



その事に気づけず、二人は互いの無事を確認しあい、ベール=ゼファーの方を向き、硬直した。

ベール=ゼファーの手は、手をむいていた。 その手にあるのは、太陽の如き眩き光の球体。

――――魔力を感知しなくても理解できた、その凄まじいまでの破壊力は彼女達の行動を押さえつけてしまうほどだ。

ディバインコロナ――――知っているものならばこう答えたであろう、かの魔法は天属性最強の魔法である、と。

太陽の輝きにも匹敵するほどの強烈な光を集めるその魔法は、全てを浄化する。

ベール=ゼファーは絶対者の笑みを持って彼女たちを見下ろす。



「あなた達ごときでは、この私を倒すことなどできないわよ? でも、そうね……これを堪えたら、命は助けてあげるわ」



それは、既に確定しているといわんばかりの言葉だった。

だが、残念ながらそれを否定する術は――――なかった。



「さぁ――――これで、終わりよ」



天に掲げられていた光球が――――ベール=ゼファーの意思に従い、放たれた。

圧倒的な絶望の光は、なのはとはやてとフェイトとアースラの人々の絶望となって襲い掛かる。

――――だが、その中でもフェイトとはやては諦めなかった。



「フェイトちゃん!」

「うん、分かってる!!」



二人は、全身の魔力を搾り出し眼前に複数枚のシールドを展開した。

その枚数は数百枚におよび、二人の魔導師がどれほどの魔力を絞ったか計算することすら馬鹿馬鹿しい。

だが――――

彼女達が必死になって作り出すシールドをあざ笑うように、ディバインコロナの光はシールドを割り、押しつぶさんとす
る。 それは、絶対的な絶望だと言わんばかりに。



「こらっ……えるんや、フェイトちゃん!!」

「はやても――――がんばってぇ!!!」



徐々に徐々にと、少しずつ迫ってくるそれは――――悪夢のような光景。

必死に抗う二人ではあるが、遂にはシールドが最後の一枚になる。

それでも、魔力を振り絞りもう既に、目前と迫る絶望の光に必死に抵抗する。



「負けへん! 負けへんッ!!」

「絶対にッ! 止めるッ……!!」



全魔力を最後の一枚に注ぎ込む二人。

だが――――それすら、防げない。

なぜならば――――



「あっ……くっ……」

「フェイト……ちゃんっ……あ、かん――――!」


全魔力を必死に注ぎ込んだのだ、その負荷はとてつもなくフェイトとはやての体を蝕んだ。

二人の体から力が抜け、全身に酷い倦怠感で蝕まれる。

グラリと傾く二人の体――――そして、ディバインコロナが迫る中――――二人の魔導師の間を抜け、白い少女がデ
ィバインコロナへと向かう!



「あああああああああああああああああああああああああ
っ!!!!!!!」



絶叫と共に、レイジングハートを構えなのはが突貫する。

ディバインコロナの端へと――――その、最後の魔力を全てレイジングハートへと注ぎ込みながら。

それは、かつて闇の書を相手に使った彼女の奥の手――――エクセリオンバスターA.C.Sと呼ばれる魔法だ。

だが、それでも足りない――――それでも、彼女の目的には足りなかった。

故に、彼女は更に自分の臨界を越える。



「ブラスターッ! ワンッッ!!」



ドシュッドシュッと言う音共に、魔力の詰まった薬莢が空になって排出される。

更に、ブラスタービットが彼女の力を増幅させてゆく。



「へぇ……?」



それを見て、ベール=ゼファーは酷く愉快そうに嗤った。

――――ベール=ゼファーには彼女の目的は理解できたのだ。

即ち、直撃するはずであるディバインコロナの光球を横にそらすつもりなのだ、と。



(でも、そう簡単にはいかないわよ?)



あざ笑うかのように、そう言うと腕を組んで高町なのはの足掻きを眺める。

――――そう足りない、そらすだけでもこの光球にはまだ足りない。

故に、彼女は更に力を振り絞り限界を超えるッ!!



「ブラスターッ!! ツーッッッ!!!」



桃色の光が、全てを浄化する大いなる光が、互いを消滅させんと必滅を唄う。

殺し、殺す、殺され、殺す。

光は光を喰らい、更に、光は光を浸食する。

だが、それでも桃色の光の方が、まだ弱い。

二人の――――フェイトとはやての全魔力を使ったシールドを無理矢理突破した今でも、その破壊力は――――凄ま
じかった。



「なのはちゃん! あかんっ、あかんっ!! やめるんやぁぁぁ!!!」

「なのは、やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」



後ろで悲鳴が、聞こえる。 それは、彼女の大切な親友の声。 それは、彼女が背負うべき大切な存在達。

それ故に――――否、それだからこそ彼女は、彼女の持ちうる最大限の力を限界を超えて引き出すッ!!

後ろにある、己の大切なものを守るために!



「全ッ! 力ッ! 全ッ! 開ッッ!」



己の中にくすぶっている力を限界まで引き出すことを、言葉にし暗示をかける。

リンカーコアが暴走するような感覚を錯覚しながらも、なのはは更に力を込める!!



「ブラスターッ!!!
 スリィィィィィィィッッッッ!!!!」



その刹那、なのはの魔力光が一瞬間だけディバインコロナの魔力光と拮抗する!

だが、その一瞬が重要だった。 放たれた魔力光は、ディバインコロナに僅かに侵食し――――そして、互いを僅かに
侵食させたのだ!

そして、侵食し互いを奪いつくさんとした魔力光は――――爆散する!!!



キュゴォォォォォォォォォォォン!!!!!



ディバインコロナとエクセリオンバスターA.C.Sがぶつかり合い、互いを侵食しあった結果――――二つの魔法はそ
の場で爆発したのだ。



「あはっ、あははははは、まさか、手加減していたとは言え、本当に止めるとはね!!」 



愉快そうに、ベール=ゼファーは嗤った。

あまりの人間の奮闘に、彼女は喜んでいた。 そう、これでなくてはいけないのだ、自分の予測を上回るという、それこ
そが彼女が人という愚かだが美しい存在をこの上なく最上の遊び相手として選ぶ理由なのだから。

だが、この行動の代償は大きかった。

――――そう、なのははその爆発のほぼ直撃を受けたのだ。

その様子を見た、フェイトとはやては絶叫と慟哭の声を上げた。



「な、なのはぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「なのはちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!」



ぼんやりとする視界の中で、親友二人が自分の名を呼ぶ気配がする。

視界は濁り、体は真っ逆さまに落ちて行く……

そして――――高町なのはの意識は完全に途絶えた。





――――運命はめぐり始める、一人の魔剣使いと魔法使いの世界を巻き込む、大きな、大きな運命の序章が。

 

 

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