翌朝――――

流石になのはは、眠そうにして居た。

そして、朝食の席でフェレット? である、ユーノを飼う事をかーさんに頼んでいた。

……話を聞くと、どうやら愛さんのところから逃げ出したようだ。

後で、お礼とお詫びをしにいかねばな……

それと、もう一つ約束を果たさなければ、な。

 

『誰かの周りで何かあった時には必ず連絡を入れること』

 

それが、俺達四人の仲で不動の位置にある約束である。

これを破ることは、俺達四人の仲では自殺行為に等しいと言うことも追記しておく。

以前無茶をした光は、凄い目に合わされてたからなぁ……

思わず遠い目をする。

あの時はとてもじゃないが直視できなかった……

俺の場合は……多分だがこうなる、か?

 

 

『恭也さんっ!! あんた、私達との約束を破ったわね!? 蒼い――――』

『い、いや……その』

『言い訳は無用です! 緑の――――』

『恭兄様……! ひどいよっ! 赤い――――』

『あ、いや……これは、その、ちょっ……まっ!?』

『竜巻!!!』『疾風!!!』『稲妻ァ!!!!』

『ちょっ、まっ! おっ!?』

『『『光の――――!!!』』』

『おちっ、おちつっ――――!?』

『『『らせーーーーーん!!!』』』

『ぎ、ぎゃあああああああああ!!!!』

 


……やばい、ともかくやばい、一直線で死が見える。 今日当たりの時間があるときに電話をしておこう、うん。

明確な死の予感に、俺は冷や汗をかいた。

実際まぁ、上はオーバーだとしても心配を余りさせないためにも連絡は入れたほうがいいだろう。

それに、‘保険’としての意味合いにもなる。

む? そろそろ病院に行く時間、か?

俺は、レンと晶に断りをいれると立ち上がり、自宅を後にした。

 

 

 

 

 

 

自宅を出て、商店街のあたりを歩いている時だった。

バーゲンがやっているらしく、人が非常に多い。

俺は、人の間を縫うようにして移動していた。

しばらくそうやって歩いていると……

トンッ

軽い音を立てて、少女が思いっきりぶつかってきた。

 

「す、すいません」

「いえ、こちらこそ申し訳ありません」

 

金色の髪の毛をツインテールで分けた少女はぺこりと頭を下げると、その後を追うようにして、大型犬が着いて行った。

……なぜだろう、妙にあの少女は印象づいた。

不可思議に思っていると、そこそこ時間がたったらしく大分人もすいてきて居た。

 

「――――ん?」

 

ふと足元を見ると、小さなかわいらしいお財布が落ちていた。

拾ってみて、先程の少女が頭の中にちらついた。

 

「あの子の、か?」

 

一応確かめるだけ確かめる、か。

そう思うと、俺は少女の歩いていった方へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 


「フェイトー……どこで落としたの?」

「分からないの……どうしよう……」

 

……当り、みたいだな。

オロオロと困った表情をして辺りを見回している少女と大型犬。

――――それにしても。

悪趣味だとは分かっているが、少し観察する。

少女の方は訓練された動きをしており、大型犬もまたきちんとした動きをしていた。

そのことに疑問を持たなかったわけではないが――――

 

(困っているようだし、直ぐに渡した方がいいか)

 

俺はそう思い、少女達の方へと近付いていく。

先に反応したのは大型犬のほうで、どことなく睨み付ける様な瞳を向けてきた。

少女の方も、少々警戒しているように見えた。

 

「すいません、これはあなたのですか?」

「え?」

「「あっ!?」」

 

少女の方へと財布を突き出すと、少女は一瞬ぽかんとした表情を作った。

……大型犬が喋っていたが、そこはスルーすべきだろう。

少女は慌てて自分の財布を受け取った。

 

「は、はい! あ、あのどこに?」

「先程商店街でぶつかりましたよね。 あの時に」

「あ……そうなんですか」

 

少女はほっとした表情で、財布を胸に抱きしめた。

ついで、頭を下げる。

 

「あの、すいません。 態々ありがとうございます!」

「気にしなくて良いですよ。 ……それでは」

 

そう言って、俺は立ち去ろうとした。

余り長く、こんな少女と俺みたいな奴が長時間話しているのを見られたら変な勘繰りをされる可能性がある。 目的も果たしたし速く立ち去ろうと思った、が。

以外にも、少女の方から声をかけてきた。

 

「あの……お名前を、伺ってもよろしいですか?!」

「名乗るほどのものでは……いえ、そうですね。 恭也、です。 それでは」

 

俺は知らない、この時出逢った少女がこれから深くかかわることになることを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴病院に着くと見知った顔に出逢った。 と、言ってもフィリス先生ではない。

定期健診がよく重なっている少女と、だ。

車椅子に乗った少女は、俺を見つけるなり嬉しそうな顔でこちらに向かってきた。

少女の名前は八神はやて、以前、階段から転落しているところを助けたことから交流が始まった。

はやては俺の傍に来ると、にっこりと微笑んだ。

 

「こんにちはー、恭にぃは定期健診?」

「ああ、はやてちゃんも、か」

 

お互い、程度は違うが足を患っていること――――俺の場合いた、だが――――にかわりはないため、割と連帯感もある。 それと、はやてちゃんいわく「あるけへんかったのを、歩けるようになったのはすごいことですー」らしい。

俺の存在は、彼女自身にもいい影響を与えると、彼女の主治医である石田医師も言っていたことである。

以来、極力定期健診にも来る様にしている。

フィリス先生は少し膨れて居たが……後で「恭也さんらしいですね」と苦笑を洩らしていたのは記憶に残っている。

 

「そういえば、CSSのコンサート、凄かったですねー!」

「ん、ああ、見に来てくれたのか?」

「勿論ですよー、恭にぃにもらったんですもん」

 

我が家の人間にはやての事を話したところ、フィーがチケットを持ってきてしまったわけで。 都合がつけば来て欲しいと頼んだのだが……席が近く、家の家族がはやてちゃんの相手をしていてくれたようだ。

――――残念ながら、俺はその中にいることは出来なかったが……

 

「面白い方たちでしたねー」

「……ああ」

 

はやては家の家族事をそう評価した。

あれ以来、なのは達とも何度か会っているようだ。

 

「それに、歌、凄く綺麗で……思わず感動してしまいましたよー」

「……ああ、喜んでもらえてよかったよ」

 

……残念ながら、フィーは観客がいる舞台では歌えなかったから聞くことは出来なかっただろうが、あの、ボロボロに傷ついた体で魔法で治す前の体で聞いた、CSSの美しい歌声は耳に焼き付いている。

魂から、震えるような、美しい歌声を――――

 

「家、聞いたことあらへんから、どんなんかなーおもてたんですけど、あの日以来ファンになっちゃいました」

「そういえば、その後の打ち上げにも来てくれていたんだったな?」

 

はやては、その言葉を受け少し照れくさそうに笑った。

 

「はい。 桃子さんが誘ってくれて、とても、楽しかったです」

 

笑顔でそう言う。

――――ふむ

 

「またいつでも遊びに来てくれて構わないからな。 家のかーさんやなのはもそうしたほうが喜ぶ」

「あ、ありがとうございます」

 

――――と、そのときだった。

偶然か、俺とはやてちゃんの名前が同時に呼ばれた、それぞれ今日は別の窓口のようだ。

 

「あ、恭也さん」

「うむ、ちょうど俺も呼ばれたみたいだからな。 またな、はやて」

「は、はいー、またお会いしましょう」

 

少し寂しそうに笑って、彼女は窓口へと向かった。

――――いつかあの子があんな風ではなく、もっとずっと笑えるようになればいいな……

俺は、そんなことを考えながらフィリス先生のいる病室へと向かった――――後に、その願いは届くことになる。 だが、この時点での俺にそれを知るすべはなかった。

 

 

 

 

 


「むー……今日はちょっときつめにしますよー!」

 

黒い手袋に包まれた手で俺の背中に触りながらフィリス先生は言った。

 

「ちょっ! フィリ、ぐ、がぁ!!」

 

ぐぅ……や、やっぱり15時間ぶっ続けは、が、ぁあ!!

 

 

 

 

 

 


美由希にもちゃんと来るように言われて、俺は病院を後にする。

それと、今日は泊まりだそうだから来てくれと言われた。

後、はやてちゃんも検査入院をするらしく、そちらも見に行って欲しいと頼まれた。

面会時間の事を聞いたら、「石田先生には話を通してありますし、はやてちゃんもそっちの方が心強いから」と返されてしまった。

むぅ……行くことには依存はないが、ジュエルシードのこともあるしな……今から、探索するしかない、か。

八束神社のほうへと向かいながら、俺はそんなことを考えていた。

 

「……ん?」

 

神社に出た時、俺は金色の物体が顔にべちゃっ、と言う音と共に張り付いてきたのを感じた。

ま、前が見えない。

だが、その正体は分かる。

 

「久遠、か?」

「くぅん」

 

その声を聞き、張り付いてきたものを剥がす。

張り付いてきたものは、予測どおり金色の毛並みの狐。

知り合いの神咲那美さんの飼い狐――――いや、家族である久遠である。

俺は、久遠を肩の上に乗せると歩き始める。

 

「なのはか?」

「くぅん」

 

頭を振って否定。

ポンッと言う音共に肩にかかる重さが増す。

そちらを見ると、久遠は人型になっていた。

――――普段は小さな子狐だが、久遠はこう見えて妖怪である。 それも、九尾の狐と呼ばれる最上級クラスの妖怪である。

詳細は、まぁ、別のところで説明するとして……

 

「くおん、きょうやに、あいにきた」

「ん、そうか」

 

人型の久遠の頭を撫でてやる。

久遠は気持ちよさそうに目を細めて膝の上に座った。

思わず、気が緩んだそのとき

 

ゾクリ……

 

この世界どころか、セフィーロでもなかなかに味わえないほどの敵意を感じた。

長年染み付いた体の動きによって、俺は臨戦態勢を取る。

久遠は俺から離れて一歩下がった。

感じられるのは敵意――――だけではなく、魔力もまたしかり、だった。

――――尋常の相手ではない、これは魔法の使用が必要だな。

一瞬、久遠の事を考えるが気にしている暇ではない。

そして、その相手が現れた。

闇に染まる、無数の動物?

――――これは、もしかして――――

奥の方に更に目を凝らしてみると、そこには黒い塊が一つあった。

 

「きょうや……! あれ、こわい……!」

「……無数の、動物霊……それも、人間も混じった形での怨念か」

 

人に対する怨念、憎しみ、怒り、悲しみ――――

だが、それだけでは霊力しか感じられないはず。 そして、ここまで強烈なものにはならない。

ふと、そのとき、思い出した。

『ジュエルシードは人の、思いに反応して――――』

 

「ジュエルシードか……! しかし、これほど強力だとは……!?」

 

そう判断すると、俺はマジックアームから剣・騎士服を出し装着する。

最終形態は鎧ではなく、CSSのコンサートの時に来ていた服のような形になっている。 最も、それは全てあの時にきていた色とは違い前進が黒くなっている。

持つ刃は二刀、他のマジックナイトと違い、俺の場合は鞘がある。

……迫り来る悪意の群れに俺は、小太刀を構える。

――――俺の闘気を感じたのだろう奴等の進行が一瞬遅れる。

 

「ふっ!」

 

そこを見逃す俺ではなかった。

久遠は咄嗟に一歩下がり、俺の後ろに居た。

そして、雷を纏い自らも攻撃態勢をととのえていた。

一閃一閃一閃一閃一閃!

閃く事五度、放たれるたびに敵の数は放たれた倍の数の敵を葬る。

 

雷!

 

ドゴォン!!

 

それと同時に、久遠から雷も放たれる。

久遠の放つ雷は霊体にも有効だ、最も、ここまで力を持てばある程度の物理攻撃なら通用する。

無数に居た獣たちは一気に数を減らしたことで動揺していた。

俺は、一蹴りで下がると久遠の横に並ぶ。

 

「大丈夫か、久遠?」

「くおん、つよい」

 

胸を張ってそういう久遠に、思わず一瞬苦笑仕掛ける。

だが、俺も久遠も直ぐに臨戦態勢を整え互いに敵に集中する。

 

「……む?」

 

よく見れば、先程の奥にあった黒い球体がこちらに来ている。 黒い獣達を回収している?

黒い球体は黒い獣を吸い込むごとに巨大になった。

そして――――

カッ! と、当り一体を闇色に染まった光が包む。

俺と久遠は、一瞬目を閉じその不可思議な光から目を守る。

そして、目を開けた時……

 

「なっ?!」

「!!!!」

 

俺と久遠は、瞳を見開き驚愕する。

そこに居たのは――――巨大で強大な魔力を放つ三つ首の犬。

即ち、ケルベロスと呼ばれるものだった。

 

『グルォォォォォォォ!!!』

 

ケルベロスの口から、闇色の炎が放たれる。

即座に久遠を抱えて跳躍し同時に魔法を唱える!

 

「黒い――――っ!!」

『グルゥ!!』

 

残り二つの口からも炎が漏れ出していた。

俺は、それに構わず力ある言葉を唱える。

 

「――――竜巻!!!」

 

放たれた魔法は、ケルベロスを飲み込んだ。

 

「人に与えられた痛みは、お前たちの方がよく知っているだろうに……」

 

俺は、誰にともなくポツリと洩らす。 多分、悪意ある人間の手にかかった動物や人間なのだろう、先程の黒い獣たちもまた生前の姿のせいか予測がついていた。

そして――――その思いによりこびりついていた魂や残留思念、それこそがこのケルベロスの正体。

地面に着地し久遠をおろす。

久遠もまた、雷放出していた。

 

「ああああああああああああっ!!!」

 

雷!

 

放たれた雷は、黒い竜巻に混じり、闇色の嵐雷(テンペスト)となる。

ここで一気に畳み掛ける……!

俺は、更に魔力をためその形を整えようとし――――

 

ゾクリ……

 

背筋を走る悪寒に即座に、その魔法を変える。

 

「守りの風!!」

 

俺と久遠を、優しい風の力が覆う。

その刹那――――!!

 

ズドンッ!!

 

嵐雷は一瞬で消え果て、ケルベロスから三方へと炎が放たれる。

その一つが、俺達のほうへと向かってきて居た!

 

ガゴォン!!

 

嵐雷を突破するのに力を使って居たせいだろう。

それはあっさりと消える。

だが、あの黒い炎の二発目をこの守りの風で受け止められるか微妙だ。

ならば―――― 一気に攻めるのみ

 

「黒い――――稲妻!!」

 

放たれた二本の小太刀に、魔力が灯る。

その小太刀を即座に帯刀する。

――――俺の異世界の友人である、ラファーガの得意技にして切り札、魔法剣。

今の俺に出来る、最高位の技の一つだ。

ケルベロスが口を開け、炎を放つ体制になった。

――――間に合わんか? ならば――――

 

ドクン

 

心臓が大きく鳴り響く。

少なくとも俺にはそう聞こえた。

あたりの景色はモノクロになり、色が失せる。

その空間では、全てがスローモーションになっていた。

 

――――御神流・奥義の歩法・神速――――

 

知覚速度を上げる、御神の剣士技の一つである。

俺は、全てがスローモーションで動く中を普通以上の速度で走っていく。

これも、騎士服のおかげである。

ケルベロスが炎を放つよりも遥かに前に俺は小太刀を抜刀する!

 

――――御神流・奥義の六・薙旋――――

 

放たれるのは四度。

三対のケルベロスをそれぞれに断つ!

そして――――世界に色が戻る。

 

「お前達は、還れ。 そして次は、幸せに、な――――」

 

ケルベロスの体がグラリと落ち、そして――――

奴の体の中に残った、黒い稲妻が爆散した。

 

 

 

 

 

 


僅かに残る、虚しさに辟易しながら久遠を見る。

久遠もまたこちらに駆け寄ってきた。

 

「久遠、平気か?」

「くおん、だいじょうぶ♪」

 

にっこりと笑って久遠はそう答えた。

俺は久遠の頭を撫でてやると、微笑みを浮かべる。

その時だった、ケルベロスの居た辺りから強力な魔力が発生される。

俺は身構えるが、その魔力の塊を見て、先程までとは違い敵意がないことに気づく。

ケルベロスの中から出てきたのだろうか?

それは宝玉だった、ひし形の形をしたのが三つ。

 

「……なるほど、だからジュエルシード、か」

 

確信を持った、これだけの魔力を放つ品物だ、渡る人間によってはかなり危険なものだろう。

俺は、それを回収しマジックアームに収める。

これは、後でなのはに渡そう。

しかし――――

 

「あれほどの物なのか……」

 

――――なのはにアレを倒しきることが出来るのだろうか?

一抹の不安を心に抱えながら俺は久遠と共に自宅に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅へと帰ると、幸か不幸かなのはしか居なかった。

俺は、なのはに部屋に戻るように言い、あとで話があることを継げた。

なのはは訝しげな表情をして居たが、それが魔法がらみだと気付くのに数分といらなかった。

基本的に、なのは賢いかだから直ぐに気付くだろうというのも俺の予想の範囲の一つなのだ。 ちなみに、その時に久遠も一緒になのはのところに行った。

なのはを部屋に返した後、俺自身も自室に戻り荷物を置くと自室からなのはの部屋へと向かう。

なのはの部屋に行った時に一番最初に見たのは。

オロオロしている妹と――――

 

「お、おにーちゃん!」

「何をしているんだ、ユーノ、久遠?」

「くぅん」

「た、助けてくださいぃぃぃぃ!!」

 

――――久遠の口にくわえられているユーノだった。

 

 

 

 

 

 

「ううううう……死ぬかと思った……」

 

久遠の涎で汚れた体をお湯で洗い流し、ユーノは項垂れていた。

 


「くーちゃん! ユーノくんは食べ物じゃないんだから食べちゃダメ」

「くぅん……」

 

なのはに叱れる久遠を見ながら、苦笑して、このままだと一向に進まないことに気付き、合いの手を入れる。

 

「それはともかくとして、ユーノ、ジュエルシードとはこれか?」

「え、あ……」

 

マジックアームから三つの宝玉を取り出し見せる。

うっすらと発光するそれは、少々弱弱しい。

 

「……魔力がかなり弱まってます、それも三つとも。 ジュエルシードにかなりの負担がかかってるみたいですね。 なのはが見つけたのにはこれほどの魔力の使用度数はなかったのに、何があったんですか?」

「む……実はな」

 

俺はつい先程あったことを話す。

ユーノはその話を聞いて、目を見開いた。

 


「そ、そんな……なのはが回収したジュエルシードと今回のジュエルシードの魔力の使用量を見れば……管理局でもSランククラスの魔導師が複数いないときつい相手だと思うんですけど……」

「まぁ、これでもマジックナイトだからな、俺は」

「「マジックナイト?」」

「くぅん?」

 

俺の言葉に一同は、俺のいった言葉を繰り返した。

その様子に、俺はマジックナイトというのがどういうものであるかを説明し始める。

マジックナイト――――異世界セフィーロにおいて、伝説の騎士言われている最強の魔法騎士のことである。

俺の知り合いと俺を含めて、四人のマジックナイトが確認されている。

マジックナイトとは、異世界から呼ばれ、‘魔神’と呼ばれる存在と契約をすることが出来る唯一の存在である。 魔神というのはセフィーロにおける、柱――――世界を祈りによって一手に支える存在――――の守護者である。

尚、俺の契約している魔神の名は‘ダークナイツ’である。

詳細は追々に……

 

「ほえ〜……おにーちゃん、いつのまにそんなことがあったんだ……」

「以前、高校一年生の時にな。 光と海と風は覚えてるな?」

「あ、うん……おかーさんが、大騒ぎして居たから――――あっ! もしかして!?」

(実は、私もびっくりしてたんだよ、おにーちゃん。 大好きなおにーちゃんがとられると思ったから……)

 

そう、光・海・風――――獅堂光・竜咲海・鳳凰字風の三人は俺と同様にマジックナイトである。

それぞれが、赤・炎と青・水、そして緑・風と区分けできるほど特徴的な色に分かれている。

ん、俺か? 俺は、黒・闇らしいが一応、魔法的にはそれぞれの魔法が使える――――あくまで、オリジナルよりも威力は劣るが。

最も、その覚えた魔法もザガードと戦う少し前くらいなのだが……

 

「まぁ、俺にも色々あったからな……とりあえず、これで戦力になることは分かっただろう?」

「い、いえ……それは前から、ですけど……助かります、恭也さん」 

「ああ、まぁ、困った時はお互い様、だ」

 


そう言って、ユーノの頭を撫でてやった。

 

 

 

 

 

 

そして、それから夜になった。

夕食をとり、なのはと一緒に家を抜け出す。

少し心配だが、ユーノが居るしまぁ、大丈夫だろう。

――――最も、怪我をさせたら、まぁ――――クククッ……

その、殺気みたいなのを感じたのかユーノがビクリと反応する。

辺りを見回すが、まぁ、つかめないだろうな。

 

「ではな、なのは……一応、こちらでも探ってみる」

「うん!」

「余り遅くならないように帰るんだぞ?」

「はーい!」

 

元気よく答えると、なのはは別の方向へと去って行った。

――――さて。

 

「行くか、久遠。 まずはさざなみ寮にな」

「くぅん」

 

しかし俺の言葉に、久遠は首を振る。

――――どういうことだ?

疑問に思ったことが、伝わったのかはたまた偶然か、ポンッという音と共に久遠の姿が人間の姿になる。

 

「くおん、きょうやのちからに、なる」

「しかし流石に那美さんが心配すると思うんだが……」

 

俺の言葉にも、首を振った。

 

「なみ、あとではなす……くおん、きょうや、てつだう!」

「……ああ、分かった、だが、やはり最初に那美さんに伝えるだけはしておこう」

 

それが礼儀だ。

 

「わかった」

 

コクリと頷く久遠を見て、俺は苦笑しながらもさざなみ寮の方へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

そして、しばらく探索をした後。

結果を先に言ってしまえば、本日の収穫は一切なかった。

久遠を那美さんのところへと帰し、そのまま海鳴病院のほうへと向かっていた。

中に入ると、看護婦さんに会釈をされ俺は、それに苦笑をしながらも会釈を返す。

 

(フィリス先生のところへ行ったら、多分そのまま泊まりだな……)

 

おそらく、そのまま話し込むことになるだろう。 と、すれば最初にはやてのところに行った方が無難か。

俺は、そう思うとはやてがいつも泊まっている病室の方へと足を向けた。

歩いていると、髪の短い女医を見つけた。

 

「石田先生」

「……あら、高町さん?」

 

石田先生がこちらへと振り返った。

そして、俺の足を向けている方に気付き苦笑する。

 

「ごめんなさいね、高町さんに迷惑をかけて」

「いえ、はやては友人ですから……迷惑だなんてことは絶対にありません」

 

俺は、石田先生の言葉にそう答えながら、隣に並び歩き始める。

……どうやら、石田先生も目的地は一緒のようだ。

 

「フィリス先生が喜んでたわよ、今日あなたが来るって」

「……あ、いえ。 いつも一家でお世話になっていますから。 これくらいのことならお安い御用ですよ」

 

石田先生は、「そうじゃないんだけどね……」と、苦笑を洩らした。

???? よく意味が分からないが。

俺のその様子を見て、石田先生は苦笑の色を強めた。

 

「ふふふ……フィリス先生も大変ね」

「???……よく意味が分かりませんが?」

「いいのよ」

 

――――「恭也君だし」と、言葉を続けられる。

む、そんなことをいっていたらはやての病室の前に辿り着いた。

 

「はやてちゃん?」

「はーい」

 

少々寝るのには早い時間のせいか、はやてはおきているようだ。

俺と石田先生は顔を合わせると病室の中に入った。

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