…忘れもしないあの日の事…
俺が作者を本気で殺す気になったの日のことを…
「…ん?」
朝、鍛錬を終え、大学が休みでのんびりとくつろぎながら読書をしているところに、唐突に気配がした。
ドアの前からだろうか?この気配は…確か…
「どうしたんだ、こんな朝早くから?」
「…っ!」
しばし沈黙の後に、扉が開かれる。
扉の前に居たのは、はやてちゃんの所のシャマルさんだった。
シャマルさんは、なぜか顔を真っ赤にして慌てていた。
「――――どうかしましたか?」
「え、あ、いえ…あ、そ、そう、ご飯が出来たんで呼びにきたんですよ!」
(本当は、朝だから…その、男性はああいう状態かなー…って、思って狙ってきたんですけど…むむ、やりますね恭也さん!)
何をする気だったんだ、シャマル(by:作者)
俺はシャマルさんの言葉を受けて、頷くと立ち上がった。
「すみません、態々呼びに来ていただいて」
「い、いえ…」
「それでは行きましょうか?」
俺の言葉に、シャマルさんは微笑すると、一緒にリビングのほうへと向かって行った。
「おはようございます〜」
「おはようございます」
「……おはよう」
「おはよう、はやてちゃん、ヴィータちゃん、シグナムさん」
昨日から泊まりに来ていたはやてちゃんを含む、はやて家一家に挨拶をしながら俺は、席に座った。
……? おかしいな。
既に、朝食の準備は出来ているらしいが、高町家のメンバーが一人も居ないことが気が非常に気になった。
俺のその疑問顔に気付いたのだろうシャマルさんはふわりとした笑みを浮かべて――――
「あ、他のみんなはやることがあるって行って出かけました」
「ああ、そうなんですか」
「あ……」
俺の疑問に、シャマルさんは答えてくれた。
ふと、空いてる席を見てその席に座る、その席ははやてちゃんの隣だった。
はやてちゃんは、なぜか頬を赤らめると少しだけ、うつむいた。
――――む、風邪か?(ぉ
「大丈夫か、はやてちゃん?顔が赤いようだが……?」
「だ、だ、だ、大丈夫ですー!」
全然大丈夫そうには見えなかった。
だから、俺は自然にはやてちゃんの額に手を当てて体温を測る。
「……………(ボンッ)」
「む、体温が高いな。やはり、横になった方が良いのでは?」
(はやて、ずるい……)
(うう……はやてちゃん、羨ましいです……)
(……主……)
(――――流石は恭也殿、これだけのことを自然にやるとは)
……?なんだ、他の三人がなんだか少しだけ、微妙に熱い視線を向けていた。
約一名、ザフィーラだけは本当に楽しそうに見ていたが。
俺は、はやてちゃんの額から手を離す。
「あ……」
残念そうな声がするが、残念ながら俺には届いていなかった。
――――この時から、少しずつ変化に気付いていれば後々、ああいうことにはならなかっただろう。
「…は!だ、だ、だい、大丈夫ですー。うち、元気やから」
「む…はやてちゃんがそこまで言うのなら」
仕方なしに頷く。
この時――――この時に、俺ははやてちゃんの囁きに気付いていれば、もしくは、口元に浮かべたそのえらく黒い笑みに気付ければ、本当に良かったのに。
「だって、じゃないと計画を実行に移せへんもん(ボソリ)」
はやてが、そう囁いた時だった。
〜♪
突如、俺のポケットから「see you〜小さな永遠」のメロディが流れ出す。
どうやら俺の携帯で、フィアッセやなのは・それに知佳さんから頂いた着メロが鳴っていた。
「あ、see you」
「主とともに見た、あのテレビの曲ですね」
「めっちゃ綺麗だったなー」
「ええ、アレだけの歌が歌えるのは本物なんでしょうね」
多謝。
そんなことを思いながら、着信している名前を見る。
「仁村知佳」
俺をサポートしてくれている人で、HGSの患者、そして太陽のような笑顔が印象的な人だ。
む、何かあったのか?
「……はい」
『あ、恭也君?やっほー元気?』
「はい、て、昨日も会ったばかりじゃないですか」
『えへへ……い〜んだよ、気にしない気にしない♪』
なんとなく、知佳さんがうれしそうに微笑んでいるのが分かった。
――――む?なぜだろう、今ものすごく体感気温が下がったような気が……?
辺りを見回してみると、なぜか八神家四人がコソコソと身を寄せ合っている。
――――?
『そうそう、恭也君。今からそっちに行ってもかまわないかな?』
「は?構いませんが……?」
『うん、ありがとう♪<span style=font-size:x-small>恭也君に手を出そうとする者には鉄槌をくださいないと、ね♪』</span>
ぞくり!
な、なんだ!?
殺気が、二つの強烈な殺気が距離を! 時間を! 空間を隔ててぶつかっているッ!?
「やる気なようやな……」
「主……我等にこそあの方はふさわしい」
「……邪魔す奴は容赦しねぇ……!」
「ふふふ……」
「ふむ、面白い展開になりそうだな」
――――何か嫌な予感がした。
だけど、知佳さんはそれに気づいているのか居ないのか♪すらつきそうな口調で言う。
「なるべく早くつくからねー、待っててね恭也君♪」
「あ、はい……では」
プツ。
「……今から来るのか?」
唐突に、ザフィーラが俺に対してそう問いかけた。
俺は、ザフィーラの言葉にコクリとうなずいた。
――――ザフィーラは溜め息を吐いた。
彼には予測がついていたのだ、これから起こる災難を。
「そう、か……では、私は少し出かけてくるとしよう」
「?……あぁ、分かった」
ザフィーラは犬の姿のまま外に向かっていった。
(すまない、高町恭也殿――――貴殿の無事と平和を願っている――――願うだけだが)←薄情
――――なぜかひどくコケにされた気分になったのはなぜだろう?
……いやいや、きっと気のせい、勘違いだろう。
人(?)を邪推するなんて、何をやっているんだ俺は。
そこまで考えた時。
ピンポーン。
玄関のインターホンが鳴った。
……意外と早かったな。
ふと、横を見るとなぜかバリアジャケットに身を包んだ守護騎士+主。
……猛烈に嫌な予感がする、が、ここまできた以上はとりあえずそれを考えないようにしておくとしよう。
玄関の方に向かうと、知佳さんと……え?薫さん?
「ごめんねー恭也君、薫ちゃん連れてきちゃった♪」
「仁村だけ、こっちにやるわけには行かないからね……私も来たよ」
「……はぁ?」
それはいいんだが、なんで十六夜帯刀+式服、知佳さんにいたってはグングニルを装備して鳳凰の鎧を着ている。
――――はっきり言って、決戦前夜と同じ準備である。
「えーと、知佳さん、薫さん……なぜ」
「まぁまぁ良いから♪八神さん一家のところまで案内してくれない?」
「ウチからもお願いするよ」
――――二人に声をさえぎられ、俺は渋々知佳さんと薫さんを居間まで案内する為、招き入れた。
二人を家に招き居れ、俺達は居間へと向かっていた。
和式の屋敷に、西洋の鎧と式服完全武装の二人は、正直かなり浮いているだろう。
――――それに、なぜだろう、さっきから師匠に鍛えてもらった感が妙なくらいに警報を鳴らしている?
師匠の天敵である奴と、俺の宿敵である奴はこの前の事件で徹底的に叩いたから…出てくるはずが無いのだが。
それに、なんとなくであるが戦闘によるものでもない気がする。
少し、首を傾げながらも警戒を怠らないようにすることにする。
(ああ、恭也君……そんな首を傾げる仕草なんて……! じゅるり……)←不埒
(恭也君……そんな仕草をされたらウチは……! あぁ……!)←マテ
そんな二人の悶える動作には一切気付かない恭也君♪←作者
まぁ、そんな事はともかくとして、俺達は居間に向かう。
そして、丁度居間に向かう途中だった。
「あらぁ、恭也じゃないのぉ?」
「ん? 水銀燈か」
階段の方から水銀燈が目を擦りながら出てきた。
どうやら寝起きらしい。
「あ、水銀燈ちゃん、おはよう?」
「おはよう……流石に、この時間まで寝ているのはどうかと思うんだが……」
知佳さんはヒラヒラと手を振りながら、そして、薫さんは少しだけ呆れた視線を送りながら水銀燈を迎えた。
水銀燈は、目元を眠そうにさせながらも答えた。
「仕方が無いでしょうぉ?……昨日は、遅かったんだからぁ」
「まぁ、そうだな……宴会だったしな」
流石にはやてちゃん等に酒を進めることはしなかったが、その皺寄せが俺に来た。
なんで、みんなあんなに俺なんかの晩酌をしようとするのだろう?(答え:酔い潰させて、ムフフ……)
師匠直伝の、酔いを醒ますいい方法がないとやばかった……
「あー、そうだよね」
「……納得じゃ……」
あ、薫さん方言が出てる。
で、結局水銀燈を加えて俺達は四人で居間に向かうことになった。
「……な、なんだ!?」
居間から漂うのは、結界を溢れ出そうな魔力の本流だった。
今まで気づかなかったのはこっちに来るまでに三重くらいの魔力の障壁が張られていたからだ。
――――なんだか、非常にやばい気がするのは気のせいだろうか?
後ろを見ると、今までとは違い剣呑な二人と訳が分からず首を傾げている水銀燈。
俺は、なぜか覚悟を決めてから扉を開けた――――
ガチャリ
扉を開けた俺は、中を見た瞬間一瞬硬直した。
ガチャン
そして、直ぐに閉めた。
――――え? あ、どういうことだ?
思わず頭の中が混乱してしまう。
「どうしたの、恭也君?」
「???」
「もぉ、早くしてよねぇ」
知佳さんと薫さんと水銀燈が首を傾げるが、俺にそっちに意識を回す余裕は無かった。
精神を集中させて、もう一度扉を見る。
そして、とあることに気付く。
(……結界?)
そう、結界だ。
何故か、先程来たときには張られていなかった結界が貼られていた。
――――嫌な予想、倍ドンで上がった。
だが、俺は余りにも愚かだった。
そう、俺はここで逃げておけばよかったのだ。
――――だが、思考が鈍り混乱のただ中にあった俺にはそれは思いつきもしない案件だった。
「もぉ、恭也が開けないなら私が開けるわよぉ?」
不意をうった水銀燈のその言葉に反応することが出来なかった、それこそまさにデット・オア・アライブのリミナリティ。
そして、俺はデッドの境界線を踏み越えた。
空けた瞬間、中から漏れ出たのは強力な殺気+。
殺気だけならば、俺は身を引かなかっただろうが、+の分のせいか、俺は思わず体を後ろにした。
普段慇懃な態度をとる水銀燈ですら、ひぃっと短く悲鳴を上げたのだ。
(や、やばい……! よく分からないが、これはやばい……っ!)
普段自宅から殺気が零れようなら即座に対処するが、対処、などと言う言葉は頭の中に浮かばなかった。
俺は、クルリと後ろを向き脱兎の如く、逃げようとしたが――――
グワシィ!!!
なぜか、扉の中から出てきた腕に掴まれる。
……掴まれた瞬間、恐慌状態にならなかったのは奇跡だと褒めて貰いたい。
掴んだ主からは、先程まであった殺気は消えたが得体の知れない悪寒と恐怖は続いていた。
「うふふふふ、恭也君、待ってたわよ♪」
腕の主の名前は――――綺堂さくら。
月村の年の近い叔母にあたる人であり俺もまた知り合いである。
俺は、口を一瞬パクパクとさせるも、必死に言葉をつむぐ。
「さ、さくら、さん……? ど、どうしてこちらに……?」
「もう勿論、恭也君に逢いにきたのよ」
頬を染めながら言うが、俺は今だに後ろを向いていたためそれには気付かなかった。
第一に、そんな余裕は無い。
何せ、殺気の量が桁外れに上がったのだから……
(や、ヤられる!?)
それは、おれ自身もどういう意味でヤられるの分かっていなかった。
だが、今の俺は間違えなく綱をわたっていたのにいつの間にか下に落ちていた!!
水銀燈はこの状況下で既に涙目である。
薫さんたちも後方から流れてくる殺気に対して迎撃体制をとっていた。
ズルズルと引かれていく俺の頭に浮かぶのは、とある歌詞。
さくらさんと薫さんと知佳さんの三人にズルズルと引きずられ――――
ガチャン!!!!
扉は閉じた。
「恭也……あなたは私のマスターなのよ、生きて帰ってきて……っ!!」
じゃあ、助けろォっっっっっ!!!!
俺は、扉越しに聞こえた悲壮な声に、心の中で必死に叫んだ。
そして奇跡か、その言葉は届いた……!
『うん、それ無理☆』
それはお前の台詞ではないだろうがぁぁぁぁぁぁ!!!
(以下、web拍手で連載中)