恭也の散々な一日〜巫女さん細腕繁盛記編〜
以前、とーさんと旅行をしている時にとある神社に立ち寄った。
その神社の名前は、加賀見神社といって――――俺ととーさんはそこの神主さんに気に入られ、しばらくそこでお世話になった。
――――そのよしみで、何故か神職の役職である宮司職を持たされていた。
まぁ、おかげで加賀見神社の手伝いをすることが出来るわけだが。
美由希と一緒にこの神社に来てから二月がたった頃――――
「……………」
あたりに散らばる衣服を見つめて俺は呆然としていた。
この神社に来てから、鬼緋女のことや、海外の魔女・魔法使いの抹殺部隊の姉弟に狙われたていた、この神社で勉強をしている自称・他称魔女っ娘、沙羅を守ったり、実は妖弧(+スパイだが、正直彼女には無理だろう)である綾奈がきたり。 あー、色々な事にプロフェッショナルな成実さんとお茶をしたり、どじでよく転ぶが実は天女だったりする悠彌と出逢ったり、そして、この神社で再開した加賀見神社の一人娘、香奈恵……と、恵瀬神宮での知り合いである、美咲とともに普通の日々をすごしていた。
……が、一月前の事件で……まぁ、俺のせいではないんだが全員と関係を持ってしまった。
ちょっと待て! 誤解をするなよ!?
本当に色々あったんだからな!!
簡単に言ってしまえば、である。 本来、俺がここに来た時点で誰かと結ばれる可能性があるとする。
香奈恵と結ばれた俺……美咲と結ばれた俺……悠彌と結ばれた俺といった具合に、だ。
そして、その可能性である俺が全てこの神社の神様によって統合され、全てが起こった状態になったのだ。
つまり、綾奈を好きになった俺+成実さんを好きになった俺+沙羅を好きになった俺+美咲を好きになった俺+悠彌を好きになった俺+香奈恵を好きになった俺=今の俺ということになるわけだ。
まぁ、こんなことになったのも、他の時には救われなかった鬼緋女さんを助けるためである。
尚、このことは俺自身の意思とこの加賀見神社に祭られている、神様である‘鬼’こと、鬼火女さんのお父さんと決めたことである。
つまり、究極の親馬鹿に付き合った結果だ。 勿論、それぞれと結ばれた記憶の中には香奈恵とも記憶もあり(香奈恵は鬼緋女の生まれ変わりの上に、鬼火女は香奈恵から更に三つに分けられていた)、俺にとっては全く依存がなかった。
よって……いつかはこんな事態になるとは思って居たが。
「ど、どうする……?」
とりあえず、辺りを見回そうとして。
頬が赤くなる。
……加賀見の巫女達は非常に魅力的だ、色々な意味で。
なんというか、裸で寝られていては流石にし、視線の置き所が無い……
と、そのとき――――
「うにゅー」
そんな声と共に、沙羅が俺の体に抱きついてきた。
沙羅は、魔女の一族らしく普通の人間と比べれば遥かに年を取るのが遅い。
だが、だが! それでもこの金色の髪の毛をツインテールにした少女の体からは、女を感じさせ俺は思わず真っ赤になる!
それ以上のことを、何度繰り返していたとしても恥ずかしいものは恥ずかしいのだ!!!
「お、おい! 沙羅っ!?」
「うにゅー、恭也ぁー……」
普段、大人びた口調で話す沙羅だが今は寝ているせいか言動が幼い。
見かけとあいまって、非常に犯罪の色が濃い。 が、それだけでは終わらなかった。
「ZZZ……」
「ふにゅう……」
「ぐぁ?! ゆ、ゆゆゆゆゆゆゆゆ悠彌ィ!? 綾奈ぁ!?」
二人の豊満な肉体が俺に押し付けられる、特に悠彌のは危険だ。
他の二人に比べて、圧倒的だ。
お、俺だって男である。 こんなことになれば流石に大変なことになりそうだ……!
だが、お忘れだろうか?
ここには、まだ、他にも三人いると言うことを。
「……??? 恭也お兄ちゃん……???」
「み、さ、きぃぃぃぃ!?」
美咲の細い体が、前から抱きついてくる。
あの巨大な鉄扇を振り回しているとは思えないほど細い腕だが……
ちょっ! 美咲さん、顔を擦り付けないでください!?
しかもよく見たら寝ぼけてる!?
って、しかもよく見たら――――
「香奈恵、どこに顔を近づけてるんだ!?
「え? ……そのきょうちゃんの……えっちなところ……」
カァと、顔を真っ赤にする姿が可愛ら――――こら、落ち着け俺!? このままだと昨日の二の舞に……!
「あらあら、諦めた方がいいわよ。 恭也君♪」
綺麗な声と共にそういわれる。
な、なるみさん……
「うふふふ、それではー、朝の第一ラウンドスタートー♪」
「「「「「おー!!!」」」」」
「て、ちょっ、ま、みんな、いつのまに起きっ……!」
他の皆――――沙羅、悠彌、美咲、綾奈達も完全に目を覚ましていた。
「恭也♪」
「恭也さん♪」
「お兄ちゃぁん♪」
「きょうやぁ♪」
「恭也君♪」
「きょうちゃん♪」
「ちょっ、ま、あ、朝の……って、あ、あ、あ、あ、あああああああああああああああああああ!!!」
恭也に幸あれ♪
その頃の、海鳴。
ドゴォン!!!
なのはとフェイトとはやてとヴィータは、朝の鍛錬をしていた。
きっちりと結界を張っての特訓だ。
今回は、小さな目標に当てることと対AAA以上の魔導師との戦いを目的とした訓練だった。
お気づきだろうか? その小さな目標とAAA以上の魔導師が誰か?
「アクセルシューター!!」
「サンダーレイジ!!」
「ミストルティーン!!!」
「シュワルベフリーゲン!!!」
それぞれの放った弾が、雷が、石化の魔法が、砲弾が……的に向かっていく。
その的である、クロノとユーノは今更ながら朝の特訓に付き合ったことを後悔をしていた。
まぁ、彼女たちの雰囲気の前に逆らえたとは思えないが。
「き、君たち、落ち着いて!?」
「そ、そうだよ!! 僕達を攻撃しても恭也さんは帰ってこなっ……!」
「ば、馬鹿かぁぁぁぁあ!!! 君は!?!!?」
殺気の密度は先程よりも上がる。
よくよく見てみれば、魔力の密度も上がっていた。
彼らの台詞のせい? いや、違う、奇しくもこのタイミングは加賀見神社の巫女たちが恭也に襲い掛かったタイミングだ。
げに恐ろしきは乙女の感、ということだろうか?
いや、勿論ユーノの台詞にも問題はあったわけだが。
――――あー、こりゃ、死んだかな?
「うふふふふふ! スターライト――――」
「あははははは! ブラストー――――」
「ふふふふふふ! ラグナ――――」
「………………」
それぞれが笑う中でも、ヴィータだけは無言だった。 が、むろんのことだが、彼女のデバイスにかかる魔力は闇の書事件の時よりも大きい。
そして、それを見ていた残りの守護騎士たちは冷や汗をかいていた。
無論、突っ込めるわけが無い。 そんな自殺行為は出来ない。
彼らの願いは唯一つ。
(((頼むから、早く帰ってきてくれ! 高町恭也ァァァァ!!!)) )
願わくば、自分達に被害が来る前に。
四人から放たれた技は、当然バリアなんぞ軽々と吹き飛ばし、轟音を響かせた。