恭也の散々な一日〜変則三魔法少女編〜
(これは、散々シリーズの本編(?)には絡まない外伝的なお話です)
暗がりの部屋の中、管理局の制服を着た三人の女性が居た。
一人は、その部屋の中心のデスクに腰掛け、一人はソファに座り、一人は扉の前に腕を組みながら寄りかかっていた。
女性の一人は、茶色のショートヘアの女性で、一人は金色のロングヘアーの女性である。 そして、最後の一人はサイドテールに結った女性だった。
そして、サイドテールの少女とロングヘアーの少女の視線は、ショートへアの女性へと向かっていた。
二人の視線を受けている少女は、デスクに肘を付き顔を隠す形で組んでいた。
そして、ロングヘアーの女性がショートヘアの女性へと話しかける。
「はやて、周辺に音漏れの危険は?」
「大丈夫や。 この部屋は、特別に防音完備にしともらっとる、ジャミングもあるから念話も今の状態じゃ、通じへん」
ショートヘアの女性、八神はやてはロングヘアーの女性の言葉にそう答えた。
次いで、逆にはやてがロングヘアーの女性へと語りかける。
「フェイトちゃんの方はどうや?」
「うん、大丈夫、クロノに頼んで私達三人の三日の休暇をもぎ取って来たよ。 ふふふふ……」
ロングヘアーの女性――――フェイト=T=ハラオウンはそう言いながら笑う。 笑みの中にあるものは、なんとも彼女らしくない。
黒い笑みを浮かべるフェイトに、はやてもまた黒い笑みを持って答えた。
――――そして、最後の一人――――サイドテールの女性もまた、同じような笑みを作り上げ、二人へと語る。
「二人とも、首尾は万全みたいだね」
「なのはちゃんの方は……聞かなくてもええな」
「うん、なのははちゃんとやってくれてるもんね」
もう、心の底から真っ黒な笑みを浮かべる三人。
とりあえずあれだ、うん。
「むがーーー!!!!」
相も変わらず、毎度の如く、縛られている俺をどうにかしやがれこんちくしょー!!
思わず心の中で汚い言葉を罵る俺。
とりあえず、猿轡の上に魔法使えない俺に、五重バインドはひどいと思います、なのはさん。
三人の視線が俺へと向かう、三人の視線にはかなり危険な色があった。 あ、デジャヴ。
とりあえず、あらすじを説明しておくけど……な。
何時ものように、三人から逃げて居た俺は、何故か三人のトリプルブレイカーとやらを受けそうになったが、直前で爆発。 非殺傷設定だからそのまま動けなくなり、何時もの如く動けなくなるところだった。
だが、しかし、そこで時空の歪みが生じ、小規模ながらも次元震? と、やらが起き、辺りを飲み込んだ。
当然飲み込まれた俺は死を覚悟したが――――次の瞬間、目を開けた時にあったのは――――裸の、この世界のフェイトさんだった。 まぁ、つまりはお風呂中。 しかも、お風呂の中に入っており、俺の体の下にフェイトさんの体があったわけで……
あの時の、大絶叫は今だに覚えています、はい。
その後、(諸々の事情で)すぐに駆けつけたなのはが俺とフェイトを発見。
その後、紆余曲折を辿って、誤解は解け、元の世界に戻ろうとしたのだが――――
「むがーーーーー!!!」
なぜか、芋虫になって転がっています、はい。
そう思いながら、俺は心の中で涙を流した。
三人は、俺の方を見つめると微笑みを浮かべた。 そりゃ、もう真っ黒な微笑みを。
「あかんなぁ、あかんよ、恭也さん。 色々とあったとはいえ、うちら全員の裸見とるんやから……責任とってもらわな、なぁ?」
そのはやての言葉に、二人は頷いた。
いや、その理屈で言うと、もっとすごいことをしている(正確にはされているが正しい)向こうのなのは達はどうするんですかー?
ちなみに、なのはは傷口の止血のために、服を脱がさざるを得ず、はやての方は……いや、バスタオル一枚で上がってきて、シグナムのレヴァンティンが掠り……まぁ、あれだ、うん。 て、言うかシグナムレヴァンティンを主の近くで振るな。 特に、薄着の時は。
思わずそう思ったが、言わぬが花である。
「さて、と」
なのはがそう囁くと、かつかつかつとヒールの音を立てて俺のほうへと向かってきた。
そのまま、俺の体を両手で愛おしそうに掴むと頬を染めながら体を抱えた。
「はやてちゃん、書類は?」
「ばっちりやで、後はここに拇印押すだけや」
びしっと、親指を立てるはやて、そこには三枚の書類があった。
まぁ、あれだ、簡単に言うと――――婚姻届け。
―――ーあれ、俺、もしかしなくても滅茶苦茶やばい???
なのはは、魔力で腕力を強化しているのか、あっさりと俺を運ぶと腕を取った。
中身を見てみると、予測どおりそこには――――
不破恭也 高町なのは
不破恭也 フェイト=T=ハラオウン
不破恭也 八神はやて
と、三組分の婚姻届があった。
可笑しな所があるとすれば、三組分なのに、書かれている人名がよっつしかないことだろうか。
て、言うか、誰か助けて……
「それじゃあ、朱肉をっと」
フェイトはそう言いながら、俺の指に朱肉を押し付けた。
ぬるりとした感覚が指に走るが、そんなことを気にしている余裕は無い。
「はやてちゃ〜ん」
「おーらい」
はやてからなのはに渡される三枚の紙。 なのははそれを受け取ると、俺の指にぺったりと押した。
お……押されてしまった……
「うふふふふふふふふ、これで、晴れて、恭也さんと結婚やー!!!」
「三人同時にゴールイン!」
「うん、やったね!!」
喜ぶ三人の少女とは裏腹に、俺の気持ちは沈んでいた。
もう――――逃げられないのか……
俺の頭の中は、諦めの境地にあった。
だが、俺の悲劇は終わらない――――
「さて、それじゃあ、メインディッシュといこか」
「あ、う、うん……」
「えへへへへ、おにいちゃん……」
三人の少女は、微笑みを浮かべながらこっちに近付いてくる。
め、メインディッシュって、まさか……?
俺は、頭の中にあの日々を思い出す、あ、あの目は間違えない、や、ヤる気だ!!
拘束されながらも、必死に逃げようとするが、その体に絡まっているバインドと言うなの縄は俺の行動を阻害する。
「恭也さん……」
「おにいちゃん……」
「恭也、さぁん……」
ちょっ、お前たち、落ちつこ……
そう言おうとしたが、猿轡のせいでむぐむぐとしか聞こえなかった。
「むがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!……あ」
後日。
「ふう、朝日が眩しいな……」
確か、襲い掛かられたのは昼だったような気がするが気にしない。
この部屋の中央部分は、色々と描写できない惨状になっているが御割愛。
そして、そこで眠るのは三人の少女。
「はふぅ……おにいちゃぁ…ん……そっちじゃ…ないよぉ……」
「あぅぅ……もう、無理……やぁ……」
「お腹……がぁ……」
すいません、お願いです、ここで閉めてください。
だが、俺は知らない、後日、異世界の妹たちと俺の本当の妹たちが、互角の戦い……いや、戦争を繰り広げることを……
年齢差や経験差なんてなんのその、愛は何よりも勝るそうです。